SEMICON SHINBUN / TECHNICAL NOTE
PNPはなぜベースを下げるとオンになる?――NPNとの違いをエミッタ基準で読む
PNPの「低くするとオン」はGNDより負にする意味ではない。ベースとエミッタの電位差、ベース電流、抵抗を介した制御をNPNと比べて学ぶ電子回路入門。
セミコン芯聞 編集部 / 公開資料に基づく技術解説
PNPトランジスタは「ベースを低くするとオンになる」と説明される。ここで低いとは、GNDより低いことではなく、エミッタより低いことである。エミッタが正の電源につながっていれば、ベースも正の電位のまま導通できる。半導体志望者のための電子回路基礎として、今回はNPNとPNPを電圧の基準から読み分ける。覚える中心は端子名の並びではなく、二つの端子の差である。
まずBとEを決めてから、電圧を比べる
バイポーラトランジスタにはベースB、コレクタC、エミッタEがある。NPNとPNPは半導体領域の組み合わせが異なり、通常の使い方で必要となる電圧と電流の向きが反対になる。回路記号では矢印の付いた端子がEで、NPNの矢印は外向き、PNPは内向きである。図が回転しても、上下の位置だけでCとEを決めない。
電圧は二点の差である。VBEと書いたらVB−VE、すなわちベースの電位からエミッタの電位を引いた値を指す。VBだけを見て「高いからオン」と判断すると、Eが電源側にあるPNPで混乱する。端子の役割を確定し、基準となるEの値を先に書くのが読み始めである。
PNPでは、EよりBを低くして順方向にする
NPNでは、BをEより高くしてベース・エミッタ接合を順方向にし、ベース電流を流す。コレクタ側にも適切な電圧と電流経路があれば、主電流はCからEへ流れる。PNPでは極性が逆で、EをBより高くする。ベース側へ電流を引き出せる経路を用意すると、主電流はEからCへ流れる。ここでの電流は慣用電流であり、電子の移動方向と混ぜない。
シリコンの接合について約0.7Vを目安にする説明が多いが、これは固定のオン判定値ではない。必要な電流や温度、素子によって変わる。本図では計算を見やすくするための仮定として使う。また、ベース・エミッタ間が順方向になったことだけでは、所望の負荷電流や十分に低いオン時電圧まで保証されない。
5Vと4.3Vなら、負電源なしでも説明できる
PNPのEを5V、Bを4.3Vと仮定すると、VBEは4.3−5=−0.7Vになる。符号は負だが、BのGND基準電位は正の4.3Vである。「PNPには負の電圧が必要」という言葉は、何を基準にした負なのかを省くと誤解を生む。ここではEに対してBが低ければよく、別の負電源を用意する意味ではない。
比較として、NPNのEが0V、Bが0.7VならVBEは+0.7Vである。同じ差を保ったまま両方の電位を同じだけ動かしても、差の計算は変わらない。ただし、実際の回路ではC側の条件や各端子の定格も成立している必要がある。二点の差を理解する例と、動作する回路の設計条件は分けて考える。
下げるのは制御信号、ベースには電流制限が要る
PNPを電源側に置くハイサイドスイッチでは、Eを正電源へ、Cを負荷へ接続する。Bを抵抗経由で低い電位へ引くと、EからB、抵抗、制御回路へベース電流が流れる。このときB端子が制御信号の0Vまで下がるとは限らない。接合が順方向に導通すると、BはEより接合電圧分だけ低い電位となり、残りの電圧は主に抵抗へかかる。
したがって「ベースを0Vにする」を、BとGNDの直結だと読まない。通常の抵抗を内蔵しないBJTでは、ベース電流を制限する抵抗や駆動回路が必要である。オフ側ではBをEとほぼ同じ電位に戻す考え方を使うが、端子を浮かせればよいわけではない。制御回路と負荷電源の電圧が違う場合も、直接つなげると決めず、駆動段の対応範囲を確認する。
職務の説明を読む前に、三問を確かめる
この基準の読み方は、回路設計なら制御信号と電源の関係、デバイス設計なら接合の極性とキャリアの動き、実装関連なら端子図と回路記号の対応を理解する入口になる。職種ごとに問う内容は違っても、どの端子を基準にした電圧かを言葉にできることが共通の土台である。記号の向きだけの暗記から、一歩先へ進める。
自分で確認したいのは三つである。Eが5V、Bが4.3Vなら、なぜVBEは負になるのか。PNPのBが正電位でも導通できるのはなぜか。制御信号を0Vにしたとき、B端子まで0Vになるとは限らないのはなぜか。答えるときは、基準電位、接合、抵抗を順につなぐ。これを説明できたら、既刊のMOSFET入門と比べ、絶縁ゲートとベース接合の違いへ進むとよい。
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