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芯解説進路・キャリア

SEMICON SHINBUN / TECHNICAL NOTE

半導体を学ぶ大学4年間――基礎科目から研究室配属までの履修ロードマップ

半導体業界を目指す学生が、1年次の数学・物理から、回路・物性・プロセス、実験、研究室配属までをどう積み上げるかを整理する。

セミコン芯聞 編集部 / 公開資料に基づく技術解説

「半導体に関わるなら何学科か」を決めても、時間割に半導体と名の付く授業は多くない。そこで不安になるが、専門科目は数学、物理、回路、プログラミングの上に積み上がる。大学4年間を、早く専門用語を集める競争ではなく、基礎から実験、研究へ進む依存関係として読む。前編の学科選びに続き、本稿では入学後の履修順序を考える。

FIG.01UNIVERSITY / FOUR-YEAR ROADMAP
START専門名を集める前に、学びの依存関係を見る基礎 → 入口科目 → 横断 → 研究
011年基礎をそろえる

数学・物理・化学・情報 / 回路

022年入口をつなぐ

物性・デバイス / 電子回路

033年横断して試す

主軸+副軸 / 実験・設計

044年問いを深める

研究室 / 卒業研究

科目名 → 単位、ではなく 前提 → 実験・設計 → 研究・職種

半導体分野へ向かう大学4年間の学びを、基礎から研究までの順序で示した独自の定性的な模式図。科目名と配当年次は大学ごとに異なる。
01

1年次――「半導体」という科目より、後で使う基礎を落とさない

最初に優先したいのは、微積分、線形代数、確率統計、力学・電磁気、化学、プログラミング、電気回路である。広島大学工学部第二類も、1年次は共通の教養教育を中心とし、2年次から半導体システムなどの専門プログラムへ分かれる。九州大学電気情報工学科の必修にも、電気情報数学、回路理論、論理回路、プログラミング、基礎実験が並ぶ。専門が遅いのではなく、専門を説明する言葉を先にそろえているのである。

たとえばpn接合を理解するには、電位と電界、指数関数、キャリアの移動を結び付ける必要がある。回路設計でも、微分方程式や複素数を避けて波形と周波数特性を扱うことは難しい。1年次の成績は単なる一般教養の記録ではなく、2年次以降にどの説明で止まるかを左右する。苦手科目を全部得意にするより、式の意味を図や現象へ戻して説明できるところまで復習したい。

02

2年次――デバイス・回路・プロセスをつなぐ「入口科目」を取る

基礎の次は、電子物性、電磁気、電子回路、半導体デバイス、材料、計測をつなぐ。広島大学の2026年度「半導体デバイス・回路基礎」は、回路理論Iを前提とし、電磁気学I、電子物性基礎論、回路理論IIとの併修を勧める。授業は電気伝導、pn接合、MOSトランジスタから、インバータ、メモリ、アナログ回路へ進む。科目名を一つ取れば完結するのではなく、同じ素子を物性と回路の両側から見る構成である。

この段階では志望職種を一本に固定しなくてよい。回路・設計に関心があれば論理回路とアナログ回路、デバイス・プロセスなら量子力学と材料・化学、装置なら制御・熱・流体、製造データなら統計とプログラミングを副軸に置く。主軸を一つ、副軸を一つ持つと、後で求人票に現れる「回路とデバイス」「プロセスと装置」の境界を読みやすい。

03

2~3年次――一分野だけで閉じず、二つの科目群を横断する

東京大学の学部横断型半導体教育プログラムは、科目を「半導体物性」「デバイス・プロセス」「集積回路設計・コンピューティング」の三群に分け、修了には二分野以上にまたがる履修を求めている。これは全大学共通の必修規則ではないが、時間割を組む判断枠として有用である。材料を学ぶ学生が回路の入口を、情報系の学生がデバイスの入口を持つと、自分の成果が製造工程のどこへ渡るかを説明しやすくなる。

選択科目は「有名そうだから」ではなく、前提科目と次に開く科目を見て選ぶ。シラバスで到達目標、履修条件、実験の有無、課題の形式を確認し、履修系統図では矢印の前後を見る。半導体専攻がない大学でも、他学科履修、全学プログラム、単位互換を使える場合がある。文部科学省のenSETは全国の拠点校と連携校を示しているため、自大学が連携圏に含まれるかを調べる入口になる。制度と開講科目は年度ごとに変わるので、最終確認は大学の教務情報で行う。

04

3年次――履修科目を「手を動かした証拠」に変える

採用で語りやすいのは、科目名の数より、その科目で何を作り、どこでつまずき、どう直したかである。実験レポート、回路図、シミュレーション条件、短いプログラム、測定結果のグラフを整理し、目的・条件・結果・考察を一枚で説明できるようにする。機密情報や授業資料そのものを公開する必要はない。自分の判断と修正過程を残す。

広島大学の半導体システムプログラムは、電磁気、量子力学、半導体素子、電子回路から製造・設計までを実験・実習とともに学ぶとしている。座学と実験を別物にせず、理論上の予測と観測の差を言葉にすることが重要である。インターンシップへ行く場合も、会社名だけを成果にせず、どの工程と職種を観察し、自分に不足する科目を何だと判断したかを持ち帰りたい。

05

3~4年次――研究室は「就職先の近さ」より、問いと作業で選ぶ

研究室配属では、テーマ名だけでなく、学生が日常的に行う作業を確認する。試料作製、回路設計、シミュレーション、解析、装置開発では、同じ半導体でも身に付く考え方が違う。教員との議論頻度、設備を自分で扱える範囲、卒業生の進路、学会発表や共同研究の機会を見学時に尋ねる。研究室の詳しい比較方法は、既刊「半導体志望者は研究室をどう選ぶか」で整理した。

卒業研究の価値は、題名が志望企業の製品と一致することだけではない。先行研究を読み、仮説を置き、条件を管理し、結果から次の行動を決める一連の経験にある。応募時には「何を研究したか」に加え、「どの判断を自分が担ったか」「再現できない結果をどう扱ったか」を説明する。大学院進学も同様に、半導体企業に入るための自動的な正解ではなく、目指す職種で必要な研究経験から逆算する。

06

4年間を一枚にすると、選ぶ順序が見える

1年次は数学・物理・化学・情報と回路、2年次はデバイスと回路を結ぶ入口、2~3年次は主軸と副軸、3年次は実験・設計の成果物、3~4年次は研究の問いと作業である。この順序なら、「半導体」という名称の授業が少なくても、今の科目がどの工程へつながるかを見失いにくい。

履修登録の前には、①前提科目を満たすか、②物性・プロセス・回路・情報のうち二分野に触れているか、③実験または演習があるか、④研究室選びへつながるか、⑤卒業時に説明できる成果物が残るか、の五点を確認する。大学ごとに科目名と配当年次は異なるため、本稿を時間割の正解表ではなく、自校のシラバスを読む順番として使いたい。

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参照した公開資料

本文は以下の公開資料を出発点に、編集部が技術的な背景を整理したものです。

  1. 広島大学工学部第二類「プログラム案内」(2026年10月14日確認)
  2. 広島大学「半導体デバイス・回路基礎」2026年度シラバス(2026年10月14日確認)
  3. 九州大学工学部電気情報工学科「カリキュラム」(2026年10月14日確認)
  4. 東京大学「学部横断型教育プログラム:半導体教育プログラム」(2026年度科目、2026年10月14日確認)
  5. 文部科学省「半導体人材育成拠点形成事業 採択機関一覧」(2025年8月、2026年10月14日確認)

本記事は記事末尾に掲げた公開資料のみを参照しています。特定企業・顧客の非公開情報は使用していません。